焦げた後に湿った生活

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闘病記53/ジャーゴンに憑りつかれる人々

【今日の病状】

起きたら昼だったのだが、起きられないうちに夕方になった。

一人でいるといくらでも病気に浸かれてしまう。

頭痛がし、外の天気が薄暗いことをみとめて、「熱いシャワーを浴びたり、ホットの紅茶を飲んだりして、とにかく温めなきゃだめだ」と低気圧に弱い人たちが言っていたことを思い出した。

 

思い出したがすぐに実行できない。

三連休の初日ということもあり、ここにはかつての夫もいないしで、飽きるまでベッドに横になってしまう。

夫が居た時は、「起こしてほしい」と一言声をかけるか、向こうから「やあ」と起き上がらせにくるかしたものである。

 

やっと起きて、一度ゆでたまごとパンとカフェオレを喰らう。

セブンイレブンゆでたまごを久しぶりに買った。後述するが、私は最近キッチンで調理できなかったので、セブンイレブンの食品に頼っていた。

ようやっと煙草に火をつけ、それが済むとまたもやベッドに戻ってしまう。

 

「合コンをドタキャンされたから来てほしい」というLINEがきていたがこの頭痛で酒を飲んだり大勢にあわせてニコニコ喋ったりする余裕がないので断った。

合コンをドタキャンするのって余程切羽詰まった理由がないと、許されないと思う。

(簡単に行かなくなる人って多分幹事の苦労を計算に入れないのだろう)

 

二回目に起き上がる頃には夜で、残った米と漬物と、冷凍ゴーヤとサラダチキンのあえものを食った。

食った後腹がきりきりした。

 

【侵入】

夏から私はヒッピーめいた人たちの集まるシェアハウスに流れ着いて、緑の多いエリアで静かに過ごしていた。

林檎ひとつ、卵ひとつ買うのだって、吟味して有機のものを買う人たち。

 

住民のひとりがビッグイシューを定期でとっていてリビングに置いてくれているので、食事をしながらだらだらと読んでいる。

ビッグイシューは読み物としてかなり面白い。

こんなのが一冊200円位で売られている。街で見かけたら暇つぶしに買ったらよい。

 

そういう居住地を得て満足しながら過ごしていたが、引っ越してから少しして煙草の煙が入るので喫煙場所を変えてくれ、というお願いをされた。

今の物件は喫煙可能なのを確認して契約したのだが、住人にひとり嫌煙家がおり、彼を気にして生活しなければならなくなった。

キッチンによくいるので、なんとなく嫌になって、自炊をしなくなった。

 

その人は最初あまりにも口数が少ないので、引っ込み思案な人物なのだろうと思っていたが、煙草のことに関しては此方が吃驚するほど横柄でよく喋った。

喫煙者は喫煙可能物件であろうと煙草が苦手な人がいる限り電子タバコにすべきと持論を披露していた。

 

管理に「契約時ここは喫煙可能物件だと確認したはずだが、〇〇(嫌煙家)が"皆の意見を聞いて皆の代表として僕は貴女に煙草のマナーを注意している"などと主張してくる」と相談すると、彼は住人ですらなく、ある女性が管理に内緒で居候させている人物だったのが判明した。

なので管理が女性に、無断で宿泊させていたことの注意と居候が住人に意見するとか感情的になるとかしないよう警告をしたのだが、女性は反省していたが居候の方はかえって居丈高になって不機嫌を隠さないようになった。

女性の心理状態は完全に居候の機嫌に左右されており、煙草のトラブルが起こってから泣きの連絡が私によく入るようになっていた。嫌煙家と女性は仲が良いように見えたが、たまに二人の会話が耳に入る時嫌煙家の方が女性を上から見てモノ言ってる(~だからバカなんだよ、とか)のでゾっとした。

 

金で買った安心が、フリーライダーが不機嫌丸出しでうろつくことで破壊されるのは、侵入の二文字で表すのが適当、と感じた。

 

その夜、頻繁に話す同僚から「私、数ある事件の中で洗脳が関わってる事件って一番怖い。事件の詳細も読めない。第二次世界大戦中の話も怖いし、こないだの、おとなの男がお金せびられたすえにホテルで熱湯かけられた事件なんか背筋がさむ~くなって…」と連絡が来た。

 

「ウソも100回繰り返せばとかいうけれど真理な気がする。飴と鞭を日常的に使っていると、誰でも洗脳されるんだと思う。される側は感覚マヒして洗脳から抜け出せないし、する側も当たり前に搾取できるから搾取し続けることが通常だと認識するんだろうな。うちの家、無職のヒモがいんだけど、ヒモ飼ってる女のひとに対して"だからバカなんだよ"とか言ってて、女のひともそれを普通に受け取ってるしで、洗脳完了してんなあと思った」

 

同僚は、ひぃ、怖い~と言って泣き顔(の絵文字)だった。

 

ジャーゴン

で、例の侵入者は最終的に出禁になったのだが、出禁になる最後の最後まで自分に意見をする権利があると信じて疑わなかったし、女性との関係性で肥大化した自己がいうてみればシェアハウス全体に拡大されていたのだろう。

 

ただしどこかで負け戦なのは承知していたようで、だからこそ<皆の意見>を建前にしてきたのだな、という感じはする。どう考えたって法律でもハウスのルールでも禁止されていないことを、居候の身分で住人に禁ずるのは出来ないからだ。

 

彼はさらさらと持論を話すが、そのさらさらと流暢な感じに反して話すことは少し考えればおかしいとわかるような内容で、たとえば皆の代表としてある種の義務で言ってるというくだりは、「誰が仲良くもない居候にわざわざそんなことを頼むのか」と看破できる。

嫌煙家は先ほども述べたように、煙草の話をする以外は殆ど口数がなく、自ら住人と交流を深めることはしていなかった。女性との閉じた関係に浸かり、後はインターネットや水や共用の食器にただのりしているだけだ。(私なら申し訳なくてせめて住人と少しは仲良くなって、頼まれごとや掃除を多めにひきうけるけどな)

実際のところは、住人の誰もそんなことを彼に頼んでいないし、そもそも彼が何の理由でここにいるのかも把握していなかった。

 

嫌煙家に「貴方言ってることがおかしいですね。ここは契約上喫煙可能ですし煙草に関しては住人同士で話して取り決めが済んでいるので、それ以上は居候に口出しする権利はありません」と言っても、彼は持論を辞めないので、「たとえばここはペット飼うのokですけど、自分が犬アレルギーだからといって、後から誰かが犬を飼い始めても文句を言ったらおかしいでしょう」と重ねると、「犬は完璧に管理したら犬の影響は出ないから比較できない」と粘っていた。

ちゃんちゃらおかしかった。犬アレルギーかつ飼育経験者なので完璧な管理など不可能なことがわかりきっているからだ。具体的に犬の完璧な管理とは何か問うたら、きっと「抜けた毛を一本も出さないこと」とか言うんだろう。

 

頑張って理論武装したかったんだろうな。

本当は感情を一個取り出して、それを見せてくれる方が私や他の喫煙者を動かせる確率がずっと上がったんだけど。

嫌煙家の言い分は、要するに彼を拾って隠しておいた女性が化学物質過敏症で体調を崩した(+自分が煙草嫌い)ので煙草をやめてほしい、ということだった。それだけだったらいいものをあれこれと子どものオモチャの刀みたいな「理論」をぺたぺた、くっつけて見せつけるので、かえっておそまつでイージーだった。

 

そんなものは何も心に響かないから愛の話をしろ。

 

彼が選択しなかった方法は最も勝算が高かった。自分はあのひとを大事に想っているから無茶は承知で言っているとか、涙ながらに情に訴えかけたりするとか、ヘリクツよりは愛の話をする方がまあそれなら、となる可能性があった。

 

なんで下手なリクツを振り上げるのだろう。そしたら相手は正しさで勝とうとするのに。ジャーゴンに過ぎないことをくだくだ喋ったって、穴を突かれて終わりだ。

つい最近も、ジャーゴンを使う男性に関わったことがあった。五月蠅いので、盤面をカオスにして狂った二択を突き付けた。過度に合理を突き詰めた場合性質は狂気になる。

択を突き付ける側の方が強いと私はポケモンで学んで知っているからそうした。

相手は二度とジャーゴンを口にすることはなかった。

 

どこかでジャーゴンを使わないといけない、と誤学習する人が一定数いる。

元義父もそうだった。

きっとそれで乗り切れた場面があったから成功体験になったのだろう。義母はそれで戦闘意欲を喪ったようだし。

 

でも、ジャーゴンジャーゴンに過ぎないので、正しさの割合はとても少ないし、真正面から正義をぶつけられた場合最後はしっぽ巻いて逃げ出すハメになる。

 

それでも人はジャーゴンを使うのをなかなか辞めない。

というか、「理論武装」してないと怖いという状態に最早なっている。

何故そのような強迫観念が発生しているのかわからない。

ストレートに自分はこういう気分だ、だからこうしてほしい、と伝える(そして拒絶される)訓練をすっぽかしてまで彼らは「理論武装」しようとする。

 

辞めないから私はそういうのに遭ったら負の条件付けを植え付ける。

人が何か害のある行為を辞めるのは、己にとって損害が発生する時だけだからだ。

 

どうしてかジャーゴンを好む人は経験上男性に多い。

私はまたか、と呆れながら破壊行為を行う。

 

自らの趣味でない破壊行為は全く楽しくない。

楽しくないので皆には愛の話をしてほしい。

 

愛の話をしろ!