寝れん、寝れん、全然寝れん。
寝れんのは仕事の都合で生活リズムを一時的に変えてる影響が大きいが、眠りが少なくて疲れていると余計に寝付けないのはなんでや?
昼食は、オフィスで魚の定食をとった。
あぶらこい、塩気の強いものはすぐに吐きたくなるから嫌になって食べなくなるのだがそうすると食べるものに偏りが出るので栄養が欠乏して倒れる。
社食は塩分を調節しているからありがたい。
(ただし小鉢の野菜はやたらめったら味が濃くて味付けする人の舌を疑う)
スーパーで「小女子」と書いたラベルがあったからなんじゃい、とおもたらこうなごだった。
ウチではこうなごでなくいかなごと呼んでいた。
今の時期は、母や近所のおばさん達が一斉にいかなごの釘煮を焚き始める季節だ。
まるで内緒で取り決めしていたかのようにタイミングが一緒で、同じものを作ってるのにご近所さんで交換する。
関西特有の、あの魔術的光景が、しみじみかつ猛スピードで甦ってきた。
魔術の披露をしたくともこちらではいかなごを知ってる人がまずいない。
スーパーで見つけたのは縮緬状のもので、私は「夜の錦であればわざわざ焚くこともあるまい」とパックされた乾燥小魚を買った。
釘煮にしたのしか口にしてなかったから干したのを食べるのははじめてだった。
残念ながら干したものは釘煮ほど美味くない。乾燥させたいかなごを食べるくらいならいつものちりめんじゃこのが上等だ。
ごはんにそのまま乗せるのは辞めて、中華風サラダに混ぜたり卵かけご飯にパラパラとふったりするとマシ。
いかなごというのは少し水分がないと美味くないという発見であった。
【他人の夢Ⅳ】
ついに、友達に言ってしまった。
「あんなぁ死んだ人ずっと夢に出んねン」
「やめてんかいきなりホラーな話」
「毎日のように生きてるモンが生きてないトコ行ってたら具合悪なるし、もうやめよと思ったらうなされたんや」
クラブだったから言えたのかも知れぬ。真昼のキッチャテンなぞで同じことを言えたかは知らん。
夜遊ぶ店というのは、ぽろっと秘密を話してしまうチカラがあるのかもしれない。
ついでにもう一つ持ってる秘密も明かしてしまったのだけど、ある時点から私は夢の中で死者の領域に引っ張られなくなった。
死者に会う代償として生気を奪われていた私は、「いつまでもこんなんしてたら、アカン…」と考えながらも手立てはなかった。
私には怪異を感知する能力はあっても跳ね除けたり消滅させたりする力はないのだ。
代わりに、おっしょさんがくれたものを身につけてからそれが加護になって他人の夢を見なくなった。
疲れて寝付きにくいと生前そうであった死者のことを想起し、他人の夢を見れなくなるとやっぱりそれはそれで寂しくて、でも本当にいつまでもそこにいるわけにはいかない、おっしょさんは私が常世に行ってしまうのを(多分心の底から)嫌がってるので素直に加護に従っていたほうがよい。
加護や福音の到来は、多くの場合やろうと思ってしたことではなくありふれた友愛の心づかいから生じ、発生させた人間はそのこと自体を知らない。
【他人じゃない夢】
父親とは仲がいいのか、と聞かれ「難しい質問やな。嫌いではないな。山野草を好もしく思たり、そういう趣味は合うしな…しやけど私は親を頼りにする心を18の時に放かしてきたよ」と答えた。
「過保護か、それともまさか虐待されたの?」
これも難しい質問だった、虐待といえば虐待なんだろうか?
「私が<血の繋がってるニンゲン>にセクハラされた時何もしてくれんかったから何もしてくれん人に親の役割を求める気ィはなくなったわ」
「父親がなんかしたのを君の母親は見逃したのか?!」
「ちゃうよ、<母のオトート>がやらかして、両親ともに目の前で見てたのに何もしやんかってん」
「その後慰めたりしなかったのか」
「母親は我慢してって言ってたね」
「それは絶対に、親が子どもに言ってはいけない」
そう絶対に言ってはいけない。
他人なら分かるのに血の繋がった者は誰もが理解を拒んだ。
あほのふりをして私にもあほの真似事をしろと無言の…いやその場を誤魔化すだけの笑顔とともに強要したから、全員に「あなた方は倫理観のひとかけらもない卑怯者、次に顔を合わせる時までに真人間になっていなければ、日本国の法律をガン無視し、この場にいた全員殺します❣️」と宣告して去った。
全員見事に道化になる方を選択したので、以来顔を合わさずに人生を進めている。見かけたら悪・即・斬、なので。
「ほんで入学金の30万を<母のオトート>から借りてるから…とうちの親がウゴウゴ言うもんやから、あたしほとんど寝やんと大学行きながらバイトして30万作って、これやッから今からあいつ殴ってこいやって差し出してん」
「それでも君の親は…」
「お察しの通り何もしない。ある時腹立って親父正拳突きで倒してボストンバッグいっこで家出た。そっから親のオカネもらわんようにした」
「カネいらん言ったのは偉い、そうでないと」
何がそうでないとなのかはわからないがとにかくハタチになるかならぬかのわたくしは非常に格好良かったはず、likeブルースリー、空手の一つも習ったことないのにもと空手家を倒すのはストリートファイターシリーズへの登場権を得ているといっても過言ではない(ホンマか?)。
同時に大事なものを失った。
安心という、子が親から貰って然るべきシロモノは砂のように崩れ去り、忘れた頃に欲しくなっても指の間からさらさらとこぼれ落ちるのだった。
幸か不幸か18才で悪魔と人間の二つの性質を併せ持つ♠︎おっしょさんに出会い色々教えてもらってせっせと音楽に打ち込んだので、青春の情熱は全て音楽に注ぎ込まれ悩むヒマがなかった。
しかしながら危うい未熟な問題児といった側面が中々抜けないのは、ほぼ確実に安心を失ったのが要因であり、自覚したところで「父親っぽいもの」「兄っぽいもの」を身近で求めるのは治らない。
一旦、子が親に売られた、と勘付いたらその後親が何したって払拭することはできないし、子の方も自分の親はしょうもないことで子を売るという事実を受け入れて生きていくしかない。
2回目に言うが幸か不幸か出会ったおっしょさんはどんなに悪魔的一面があっても「助けてくれる大人」だった。
少なくともこの人は私が理不尽な暴力を受けた時「我慢せよ」とは絶対に言わず「気力体力を養ってから殺る方法考えろ、今の状態では人埋めるのも一苦労やぞ」と言うし、親より好もしい。
自分がおっしょさんを愛している理由のかなりの部分は知らず知らずのうちに親の代わりになっているんが大きいのかもしれないとはじめて気がついた。
与えられなかったものに悪魂がれて、せんどトライしたびたび惨い失敗をして人に迷惑もかけてきたけれども、人を斬殺するよりも、あるいは精神的に殺すよりも、全然倫理的にマシだったと思う。
自らのリミットが見えたビョーニンにはやることがある、「自分たちはもう大人だ、嫌なことしてきた奴らから一緒に逃げよう!」と約束してたのに先に行ってしまった人を惜しみながらも喧嘩して右フックを人にかまし右手にニコちゃんマークの生傷ができるなどという芸当で豊かでキュートな生活を現世でやってのけ「まだ舞える」とふと誦じて友人を感動させたりしろ。
または「あたしフツーの人なりたいねん、フツーのことなんもできてへんような気がしてイヤやねん」などとこぼして(その気はないのに)ヒトをドギマギさせていつのまにやら世話をさせたりしておけ、どの人も「来た」時には瞬間的に寿命が来るのならばなるべくトッポイ・キュート・マジカル三拍子がええわな。
登場30秒で客を1人でも魅了出来なければ辞めた方がいいみたいなトコにずっとおったのに、同じ量の努力をしても逆のことは出来んと何故思い込んでいるのだろう?
願望を抱くのはタダやから「今からでも甘えたい‼️」と思っておくだけ思っておく。MC生活は「誰だってはじめは真面目だけがとりえ」だと歌ったが真面目はジューブンにもちあわせておる。哀しい過去を持つコメディリリーフにシリアスな一面があり最後に理解者が現れるなんて、映画のシナリオならベッタベタだけど、ベタだからこそイイではないか。