焦げた後に湿った生活

このブログは投げ銭制です。投げ銭先⇒「このブログについて」

闘病記64

この間、ハサミが壊れた。

刃がこぼれたのではなく持ち手のところがボロボロになって、手入れしようがなかった。

「ハサミってこんな壊れ方するんだ」とはじめての心地がした。

文房具屋へ行って新しいハサミを買ったが、前のより気に入りそうにはなかった。前のだって、別になんてことないロフトで買った品物だったけど。

 

今日オフィスへ行けなかった。

血が足りなくて起き上がれなかったのだ。

リモートワークに切り替えますと伝えて、午前中は殆ど気を失っていた。底なしの眠気。

11時ごろようやく正気になってパンとカフェオレを食べる。

食事は普通に摂っているはずなのに、誰かが見えないポンプでばかすか私の血液を抜いている。

 

血を抜かれきったふらふらでバルコニーに出て煙草を吸った。

煙草の煙りを「紫煙」とあらわす。

さいころその文字をみて、「ウソだーー。煙は白いもん」と思ったことがある。

煙草を吸い始めてから、ふとした時に「あぁ本当に紫色に見えるなァ、紫煙て書いた人は粋やなァ…」と感じたのを思い出した。

 

今のところ仕事は出社しなくてもいい内容なのに、週一回出なければならないという馬鹿げたルールのために明日出社日をスライドする。

 

夢の内容は覚えている。

一年前ならダメージを喰らっていたであろう、リアルな夢。

でも今日の私は「このあいだ死者に会うことを願った代償」と、夢を恐怖や憎悪ではなく現象として切り取れる。

(正確にいうと代償はこれにとどまらず複合的にやってくるという予感がある)

 

血が足りない、血が足りない、立って歩いていられない…

もう時間がないよって誰かが頭の中で言う。

 

生きる力がひとより少ないのに死者のことを考えてリソースを消費しているのは、人によっては馬鹿らしいと感じることかもしれない。

もっと生産的なこと、前に向かうためのことに使えと。

 

しかし、私はそれをしないで死者のことをさらに思う。

沢山作品を作ったけど、気持ちを表すには全然足りなかった。

あと少しで泣けそうだからまだ死者のフェーズに居ることにする。

 

それはそれとしていつリミットが来てもいいように整理を始める。

アナログ式に電話帳を作っているが友達全てを記したら腱鞘炎になってしまうから、「こいつらに連絡さえすればあとはなんなりとしてくれる」人々を何人か抜粋して書いている。

紙に書いているのはたびたび電話自体を失くすからだ。

 

電話帳のうつしを、師匠宛に残して、それから…と考えたところでまた眠くなってしまった。