【病状】
ゆるやかな崩壊、と表せる。
表面だけ取り繕っていて、内臓はしずかに壊れていっている。
食べられるものが減り続けている。
何ならスルスル食えるのだろう。
今日はいきつけの韓国惣菜屋でチヂミを買った。米の残りはあったけど、その店のチヂミしか食べられそうになかったからだ。
ずっと小さな吐き気が内臓にこびりついている。
眠ることも拙いし。リビドーもないし。
三大欲求が少しずつ崩れていっている。
身体が非・クロノロジカルになっていると気づいてから(≒闘病記の1くらいのとき)まあいつかは崩壊すんでしょね、と思っていたから崩壊しないですむ方法を探す。
【悪夢の内容】
寝つきが悪いのはもともとだが悪夢があると疲れる。睡眠の質が下がる。
ストレートに暴力的なものや恐怖を感じさせるものから間接的に私を消耗させる内容へシフトしていったとこの間書いたがまだそれは続いている。
夢の中でいつものように「探偵」だった、名探偵マダム・リーは私が無意識の世界を歩くために作り上げたオルター・エゴだがそのマダム・リーは困難にあたっていた。
彼女は眉間に皺を寄せるような表情でほとんど喋らずに思考していた。
彼女の行くところ必ず事件があり解くべき謎があり指すべき人間がいる、だが、彼女は机を挟んで向き合っている男から「彼女が謎を解いても世界が良くならないこと」を間接的に知らされる。(勿論男の方は確信犯だ)
男の間接的なメッセージを受け取った彼女は考えた。このメッセージは、
①謎を解かさせないこと
②マダム・リーに無力感を植え付けること
を示しているはず。
であれば、男は謎を解かれると困るのだ。
しかし謎を解いたことでワリを食う人間、おおくは弱者、がいることも事実、一方この男をのさばらせていいはずがないのも事実で、マダム・リーは選択を決めかねていた。
いずれマダム・リーは選択する。その先の夢は見れなかったけど謎を解くだろう。謎を解かない名探偵なんて存在しないし私のオルター・エゴが決断しないのもあり得ない。
覚えておくべきは、無意識の世界で、こんな風に消耗させられていること、だ。
【繭】
茸氏のカットの日だった。
終わった後に呼び出されたのでなんじゃらほいと思ってたら「地方の店を任されることになった」ということだった。ヘエ。
人生で愛顧していた美容師の3割がいきなり南の島暮らしを所望し離任していったことを考えると実に地味な報告だった。生活に根ざしているというか…
で、彼は後のことをどうするか決めたい(物凄く精密な表現をすると"決めてあげなければいけないかもしれない、この人の場合は"という感じだった)とのことだったので、次の機会に後任にどんな人を所望するかなど打合せたいと。
彼が私のことをしっかりしてない、危うい人間だと感じているのがよく分かった。
ふつう勤めていた美容院の客の一人が自分の離任後にどうするかなんていちいちアドバイスしない。
なんなら彼が持っていた選択肢のなかには「地方まで来さす」という択も限りなくパーセンテージのないことではあれど存在はしていたみたいだった。
そこまで頼りのない人間だと思われていたのか…
「今日も眠たいですか」
「眠い きっと寝る」
与しやすし、な客だったと思う。なんせ最初のオーダーさえ聞けば(それも大抵はお任せで似合うようにして、だ)、あとはずっと眠っているのだから。
あれはなんでだったんだろうなあ。茸氏からマイナスイオンでも出ていたのかな。
「僕は10時間も眠ったら眠りすぎてかえって一日眠たくなる、というのが嫌で休みでも同じ時間に起きますよ。6時間睡眠くらい。」
念のため聞いた。
「それって一人暮らしの時も同じ?」
「いや、一人暮らしの時はもう少し眠ってた。」
「…私、実家にいても一人暮らししても同居しても等しく10時間以上寝てるわ」
自分の、絶望的なまでに変わらない性質を確認完了。
何かの繭のごとく眠り続けこと茸氏が髪を整える間珍妙といえるほどに睡眠を貪る。
カラーリングが終わりトリートメントとマッサージに移る。
あたたかいミストをかけられながら茸氏の優美な指でやるマッサージは、お釈迦様が蜘蛛の糸を垂らしているみたいだ。その糸がこんこんと積もって余計眠りの繭が具現していくのかもしれない。
さようなら。
【仕事】
この世の中の人間で以下を無意識的にか意識的にかやっている人間は二割しかいないという結論に至った。
・受け取った文章内に、補うべきことばがあるかどうかのチェック
・それまでの話の文脈を予想しながら思考すること
・今とりかかっているタスクは何の目的でやるのかを考えること
・依頼をするときは、誰に何をやってほしいのかをまず明確化すること
日本語だとこれらを出来るのに英語になると途端に出来なくなる人がいるのも謎だ。